前回は、気づきにくい歯ぎしり・食いしばりのしくみを見てきました。今回のテーマは、その力が「歯そのもの」にもたらす影響です。くり返される強い力は、少しずつ歯を削り、ときに割れやしみる症状につながることがあります。しかも初期は痛みが出にくく、気づいたときには進んでいることも。鹿児島市武岡の小森歯科クリニックが、歯に表れるサインと向き合い方をやさしく解説します。
歯の表面は、エナメル質という体の中でもっとも硬い組織でおおわれています。ところが、歯ぎしりのような強い力がくり返し加わると、そのエナメル質も少しずつすり減っていくことがあります。これを「咬耗(こうもう/噛む力による歯のすり減り)」といいます。
すり減りが進むと、噛む面が平らになり、歯の高さが低くなっていきます。前歯の先が欠けたように短くなったり、奥歯の山(噛み合う凹凸)が消えて“つるん”とした面になったりするのが特徴です。たとえるなら、長く使った靴の底がすり減って平らになるようなもの。エナメル質の内側にある象牙質(ぞうげしつ)が透けて、歯が黄ばんで見えることもあります。
やっかいなのは、すり減りはゆっくり進むため、鏡を見ても本人は気づきにくいことです。「昔より歯が短くなった気がする」という感覚が、実は大切なサインになります。
すり減りが「削れる」変化だとすれば、こちらは「壊れる」変化です。強い力が一点に集中すると、歯や被せ物が欠けたり、ひびが入ったり、ときには割れてしまうことがあります(歯の破折)。とくに神経を取った歯や、大きな詰め物・被せ物のある歯は、もろくなっていて割れやすい傾向があります。
もう一つ知っておきたいのが、歯の根元がV字にえぐれる「くさび状欠損」です。原因は一つではなく、歯みがきのときの力の入れすぎ、飲食物や胃酸などの酸、噛む力の負担といった複数の要因が関わって、少しずつ削れて生じると考えられています。ここが削れると、後述のしみる症状にもつながりやすくなります。
歯が大きく割れてしまうと、被せ物や、場合によっては抜歯が必要になることもあります。だからこそ、ひびや小さな欠けのうちに気づくことが、歯を長く残すうえで大きな意味を持ちます。
「冷たい水がしみる」「歯みがきのときにピリッとする」――こうした知覚過敏も、歯ぎしりと関わることがあります。
すり減りやくさび状欠損でエナメル質が薄くなったり、歯ぐきが下がって根元が露出したりすると、その内側の象牙質があらわになります。象牙質には、神経へと通じる細い管が無数にあり、そこに冷たい・熱いといった刺激が伝わることで、しみる・痛むと感じるのです。ストローの中を刺激が伝わっていくようなイメージです。
知覚過敏は虫歯とまぎらわしいこともあり、自己判断は禁物です。気になるしみが続くときは、原因を確かめる意味でも、一度咬み合わせや歯の状態を確認しておくと安心です。
歯のすり減り・割れ・しみるは、どれも「噛む力の負担」という同じ根っこから枝分かれした症状です。共通して言えるのは、いちど失われた歯の組織は自然には元に戻らないということ。だからこそ、早く気づいて負担を和らげることに意味があります。
次のような変化に心当たりがあれば、早めに歯科で相談しておくとよいでしょう。
当院では、歯やお口の状態を確認し、すり減りや欠けの有無、しみる症状の背景をふまえて、おひとりずつに合わせた対策をご提案しています。次回は、歯だけでなく「頭痛・肩こり・顎の痛み」といった、体に広がるサインについて見ていきます。気になる変化があれば、ひとりで悩まず気軽にご相談ください。
歯ぎしり・食いしばりの強い力は、歯のすり減り(咬耗)、割れや欠け(破折・くさび状欠損)、そしてしみる症状(知覚過敏)といった形で、歯そのものに表れることがあります。どれも初期は気づきにくく、進んでから現れやすいのが難しいところです。けれども、小さなサインのうちに向き合うことが、歯を守ることにつながりやすくなります。鹿児島市武岡の小森歯科クリニックは、皆さまの歯と噛む力の健康を支えていきます。ほかの記事は歯科コラム一覧からご覧いただけます。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、特定の効果を保証するものではありません。症状の感じ方やお口の状態には個人差があります。歯のすり減り・欠け・しみるなど気になる症状がある場合は、歯科医院へご相談ください。(参考:厚生労働省「e-ヘルスネット」、日本補綴歯科学会・日本歯科保存学会の公開情報をもとに作成)